あやしい彼女
監督: 水田伸生
キャスト: 多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海、金井克子、志賀廣太郎、小林聡美、三鴨絵里子、越野アンナ、久保佑太、Kilt、田村健太郎、温水洋一、野村周平
公開: 2016年4月1日 観賞: 2016年4月9日
元映画の韓国版は名作なので、もうそれはなるべく頭から振り払おうとしながら見るのが大変だった(笑)
ストーリーはよくあるベタな若返りもの。
韓国版はあのファンタジー性を生かして最高の夢物語に仕上げたわけで日本でそれが出来るのか心配だったのだが、多部ちゃんのコメディエンヌっぷりが生かされて上手く作られていた。
◆あらすじ
女手一つで娘を育て上げた73歳の瀬山カツ(倍賞美津子)は頑固でおせっかいな性格のため、周りからは敬遠されがち。ある日、ふと入った写真館で写真を撮り店を出ると、20歳のときの若々しい姿のカツ(多部未華子)になっていた。カツはヘアスタイルやファッションを一新、名前も節子にし、人生を取り戻そうと決意。その後、のど自慢大会で昭和歌謡を歌ったことから……。(シネマトゥデイより引用)
おばあちゃんが若返る!?
みたいな下りは予告や宣伝でもバンバン流されているのでネタバレではないよね…と思いながらバンバン書きますのでご了承を。
とにかく多部ちゃんがキュートで(老人が中にいるようにはあまり見えないんだけど。)、存じ上げませんでしたが歌も凄く上手くて。
多部ちゃんのファンではなくとも引き込まれること間違いなし。
個人的にはこの人の声がとても好きなので歌声も堪能できて満足な1本だった。
聞いているだけで泣かされてしまう昭和歌謡シーンも良かった。
使われていた昭和歌謡楽曲のラインナップは
・真赤な太陽
・見上げてごらん夜の星よ
・悲しくてやりきれない
(こんなものだった気がする…他にあったら追記します。)
特に苦労していた若い時代の映像が被る「悲しくてやりきれない」は秀逸だった。
オリジナルの韓国版の方でもね…あのシーンの回想でやられるんだよね。「白い蝶」。
上にも書いたが、ストーリーの筋自体は本当にベタなので、それを夢のようなファンタジーに変えられるか、ただのベタベタなドラマで終るかは演出に掛かってくる。
「悲しくてやりきれない」背景の演出は充分にこの人の人生を映し出す鏡になっていたと思う。とても良かった。
ただ、これが日本リメイクされると聞いた時に引っかかっていた事があって。
それが実はこの時代背景の事だった。
韓国では日本と違って戦争の歴史は現代に近い。
オリジナルでは主人公の夫は60年代にドイツへ出稼ぎに渡って事故で死亡し、主人公は朝鮮戦争後の混乱の中で苦労するという設定になっている。
この日本版では、苦労していた時代背景や戦災孤児設定が、ちょっと年齢と合わない気がするの。
この設定にするには後10年は年取らせないとダメなんじゃなかろうか。あるいは「現在」を10年前に設定するか… そんな事がすごく気になってしまった。
あともう一つ、オリジナルと大きく異なっている設定があって。
見ている間、それが物すごく不満だったのだが、恐らく日本人にとっては むしろ改変されなきゃ受け入れられない部分だったから変えたのだろうなと今は思っている。あちらは儒教思想の大きな国ですからね。
しかし、あくまでも「私個人は」ですが、その部分が泣けるファンタジーだったので…改変されて、かなりショック。
※そこはサンマを突きつけなくちゃね…(違)
そこを改変したせいで、ストーリー全体がNHK朝ドラテーマのようになってしまって…まぁ、働く女性のための応援ストーリーみたいだなって。。
もっとも、そのおかげで個人的に救われたセリフもあったので。そこは良かった。
オリジナルを見ていない方にとっては、全く気にならない話ですよね。
この作品、この日本版だけではなくて、未見なのだが中国版とベトナム版までリメイクされている。
インド版も出来るらしくて、ちょっと見てみたい。
時代背景にそれぞれのお国柄が反映されるんだろうな。
主演の演技と歌唱力と共に、そこが楽しみな所。
※なお、以下のネタバレ欄には結構不満点が書かれているので読みたくない方はスルーして。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
大きく改変された「極めて個人的な不満点」…。
なぜ娘設定に変えたのだろうか。と、ずっとムカ~っとしながら見ていた(笑)
だって、これのオリジナルは私にとっては母と息子のファンタジーだったのだもの。
本当に極めて個人的な感想ですが、やはり、母が入れ込み大事にして人生かけた…って子どもは男の子の方がなぜか泣ける(笑)
もっともオリジナルの方は、姑にいびられてストレスで入院しちゃうお嫁さん…みたいな所から話は始まり、最終的には「母さんはこんなに苦労して来たんだし、実はお嫁さんの事も思っていたんだよ!」でオール解決みたいな筋立てなので、儒教思想の大きなあちらならともかく日本人には絶対に受け入れられないだろうっていうのは解る。。
けれども、本当に可愛げの欠片もないヒドい姑ババアの悲しい切ない背景が若返ってから見えてくるからこそ泣けたんだけれどもね、オリジナルは。
日本版の方はこの母親にあまり何の感慨も抱けないので、切ない過去を見せられてもギャップの感動が小さいんですよね。
おまけに私の場合は「時代背景10年違うんじゃ…」と思いながら見てしまっていたので、余計に入り込めないという部分があり、そこはもったいなかったかも。
もう一つの不満は、あのPOPなオリジナル曲「帰り道」(笑)
いや、平成的に聴けばイイ曲だった。私は元々、小林武史さんの手がける楽曲が大好き。
けれども、基本的に昭和歌謡とは違うと思うのだ。
昭和歌謡はヴォーカルが楽曲の一部として溶けていないのね。あくまでも歌とバック、であって、だから歌詞が前へ出る。
この作品ではイケメンプロデューサーに「最近の子」の歌を「軽い」と言わせ、主人公に「歌は心だ」と言わせているのに、何だかこの曲はプロデューサーがダメ出しするような歌そのものだと思うのだが(笑)
「あなたがいなけりゃただのストーンで 転がることも出来ないまま 宙に浮かんでる」
うーーん…ポエムだ。。
「time after time ~~♪Hey!」とか始めた時には、楽曲で終わったな…と思いました。
いや、繰り返し申し上げますが、決してこの曲がダメだとか嫌いだとかではなくて、この映画の主題となる楽曲ではないよね…と思うのだった。
改変されて心にグッと来たのは、主人公がスーパーで子どもを怒っている母親を優しく諭すシーン…などではなく。
「金を稼ぐことだって立派な子育てだよ」
このセリフに尽きる。
自分はロクに良い母親やって来なかったので。家事は苦手だし、働いて家計を助けることが子どものためだと思って生きてきた。
そこを救い取られた気がした。
ほんと、働く母親にとって優しい映画だった。日本版。
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comment
BROOKさん
私もーーちょっと思ってましたよ、事務所のしがらみ(爆)
小林聡美さんを前に立てておけば日アカで助演女優賞くらい引っかかると踏んだのか、とか(笑)
でも、たぶん、オリジナルの姑設定では日本では受け入れられないからだろうな~っと今では思ってます。
>韓国版も急にPOPな曲になっていたような気がしました。
そうでしたっけ…もう一度オリジナルの方を見直してみたいな^^
>なぜ娘設定に変えたのだろうか。
私もこれは気になりました。
なぜ娘に変更したのか、何か事務所のしがらみみたいのが関係しているのだろうか…^^;
いろいろと勘繰ってしまいます。
>あのPOPなオリジナル曲「帰り道」(笑)
なるほど…。
これは一理ありますね。
韓国版も急にPOPな曲になっていたような気がしました。
この辺りを意識したのかもしれませんね♪