8月の家族たち ~ AUGUST: OSAGE COUNTY ~
監督: ジョン・ウェルズ
キャスト: メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、アビゲイル・ブレスリン、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュリエット・ルイス、マーゴ・マーティンデイル、ダーモット・マローニー、ジュリアン・ニコルソン、サム・シェパード、ミスティ・アッパム
公開: 2014年4月18日
2014年11月30日。DVD観賞
親って…家族って面倒くさいものである。
全然そんな風に思った事もない仲良し家族にお育ちになった方は、きっとこれを見たら「ナニこのうるさい家族…」「こんな家あるワケないじゃん」と眉をひそめる事になるでしょう。
だから見る人を選ぶ作品かも知れない。
<あらすじ>
オクラホマの片田舎に住む母親バイオレット(メリル・ストリープ)と、父親がこつぜんと姿を消したことで集まった3姉妹。
一癖ある母バイオレットは病を患い、長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫(ユアン・マクレガー)の浮気と娘(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩んでいた。
一方、次女アイヴィー(ジュリアンヌ・ニコルソン)はひそかな恋に胸を躍らせており、三女カレン(ジュリエット・ルイス)は家族の危機に婚約者を伴い帰宅した。(シネマトゥデイより)
予告を見て「ウチの実家みたいだ」と思い、観ることにしたのだった。結果、想定以上の凄さだった。
けれども「実家」という存在の居心地悪さ、気まずさ、緊張、不快感…そういう部分は近いと思われる…。ウチの場合は母親が先に居なくなったらこんな風になるのかも知れないね…。
「実家」は鎖であり、常に気になる存在ではあるが出来る事なら忘れたい。だが、自分がそこで育ったことは確かだし、思い出深い場所である事も確かなのである。
良い事も悪い事もあった。この映画にも使われているT.S.エリオットの一文のごとく。「人生はとても長い」。
人間の人格を形成するのは親だと思っている。三つ子の魂百までってやつ。
頑固な長女はまさに母親譲り。親と違うのはラリっていない事くらい。ハッキリと意思を貫けない次女は優しいと言えば聞こえがいいが抑圧されて育ってきた様子がよく解る。自由な三女は実家とは違う家族を追い求めるあまりに失敗を繰り返す。
この三姉妹を演じたジュリア・ロバーツ、ジュリエット・ルイス、ジュリアンヌ・ニコルソンが、本当にこんな人いるいる…というのを体現している。
そして、母親のメリル・ストリープが、もう本当に…イヤな親。
家族のお食事の様子は緊張と愕然を通り越して笑ってしまう。当事者たちは必死なんだけれども、外から見たら「他人の争いごとは蜜の味」的な…。
インコも死ぬ暑さの中で、寒い群像劇が繰り広げられる。
原作は戯曲という事で皆さん舞台に立って訴えるかのごとく熱いセリフの応酬だが、その表情、臨場感のある背景は映画ならではの演出。
個人的には一生懸命常識人を作ろうとしている夫のユアンが可哀想で情けなくて…楽しかった。
見ようと思ったのは予告にあったこの夫の「異常な家族」というセリフなんだ。「それでも私の家族なのよ!」。
こういう家が親戚になるというのは…大変な事です…。
以下ネタバレ感想
長女夫婦は夫の浮気で別居状態。その娘はいけない葉っぱに興味津々なお年頃。
次女は従兄という名の実の兄と知らず知らず恋愛中。
三女は自分の婚約者が危ないお仕事をしていて女にもだらしないダメンズだと気付かない恋愛依存体質。
「立派な両親」が育てた娘たちは…本当にご立派だ…。
人の性格には必ずのように生立ちが関わってくる。
姉妹は揃って病んでいる。親もそうだから仕方ない。
結末としては、『ホームレス中学生』状態……つまり「家族解散~~」なワケである。
バーバラの車を追って走る、もはや体裁もプライドもない哀れな老女・バイオレットの姿が痛々しい。
何てラストなんだ…とは思うけれども、そういう家庭にしてしまったのは偏屈で毒舌な自分自身だから。
この病人は1人になってしまって今後どうなるのだろう…。家政婦はずっと居てくれるほどの給金を貰っているだろうか…と、色々考えた。
けれども、バーバラはあの後、戻って来るような気がするのね。母親に一番似ているのはこの人だから。
毒舌で人を刺し、常に機嫌が悪く、他者を排除して生きる。
でも実は孤独が嫌いで臆病で愛情深い。
妹と夫の不倫を知っていて、こんなに長い間隠し続けてきたようにね。それは「赦し」ではなく、全てを認めてしまい夫を責めたら壊れる事が解っていたからだろう。
バイオレットはベバリーを憎み愛していた。離れて行ってほしくは無かった。
どんなに強そうでも本当に強い人間なんていないんだよ。
バーバラには必ずそれが理解できる。いや、もう出来ているのかもしれない。
憎むのも気になるのも、どうしようもなく血が繋がっているから仕方ない。理解してしまうのも血が繋がっているから。
嫌になるほど似てしまう。それが「無作為に選ばれた細胞」で繋がった親子という絆。
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