マリー・アントワネットに別れをつげて
原題 : ~ LES ADIEUX A LA REINE ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ブノワ・ジャコー
キャスト: レア・セドゥー、ダイアン・クルーガー、ヴィルジニー・ルドワイヤン、グザヴィエ・ボーヴォワ、ノエミ・ルヴォフスキー、ミッシェル・ロバン
日本公開日
公開: 2012年12月15日
レビュー
☆☆☆
2013年8月5日。DVD観賞。
ぇぇぇ…ぷっつーーーん……え、この先は一体……。
ある意味、さすがフランス映画。いや、でも…もう少し描いてくれても……続編はいつですか…?みたいな…。
ベルサイユのばらのおかげで歴史に興味を持つようになり、何冊もフランス革命関連本を読んで過ごし、衣装の歴史にもハマってデザイン画まで描いていた頃が懐かしい…。
マリー・アントワネットと聞くと、それだけで見なくてはいけない気持ちになってしまう。今だに。
そんな自分にとっては、ちょっと期待し過ぎた1本だった。
ヴェルサイユ宮殿での撮影
衣装も調度も素晴らしく、ヴェルサイユ宮殿で過去に撮影を許可されなかった所までも使われているという建築の美しさと臨場感…。
ストーリーは1789年7月14日。かのフランス革命3日前から始まる。
あらすじ
フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネット付き朗読係のシドニー・ラボルドは、今日も王妃のために部屋に呼ばれる。
王妃は選ぶ本も気まぐれ、読みかけている物を途中で止めさせ他のものを注文。挙句の果てには注文したことさえ忘れている。終いにはシドニーがその場にいる事すら忘れている…という自分勝手な人。
しかし、美しい。そして強いのに儚い。シドニーは王妃に心酔していた。
フランス革命勃発、「ずっとおそばに。」宮廷朗読係の少女シドニーは心酔する王妃への忠誠を誓うが、王妃からは思いもよらぬ頼みを命ぜられる。「いいえ、あなたは私の大切な人、ポリニャック夫人の身代わりに。」身を引き裂く嫉妬、生命の危険(Filmarksより引用)
実話のリアリティ
翌日、バスティーユ牢獄が民衆の手に落ちたというニュースが宮廷中を駆け巡り、居住している貴族や召使たちは一気に不安の中に突き落とされる。
その日、珍しく王妃はシドニーに向かって本以外の話をした。
貴女は、1人の女性を好きになった事はある?
例えば、その方の姿が見えないと胸が苦しくなるくらい。
ヴェルサイユ宮殿の中に住む人たちの暮らしが実写になって再現されているのがオタにとってはもう何とも泣けそうなほど嬉しい。
宮殿はいつも輝いていて美しく豪華だけれども、何せトイレのない時代、決して衛生面では美しいとは言えなかった。そういう部分まで描かれている。
朗読係という召使目線のヴェルサイユだからこその今まで光が当たらなかった所を存分に楽しめる。
召使の人たちはこんな所で、社員食堂みたいな食事風景を繰り広げていたんだね…など。
そして、宮殿内だからこその嫉妬や闇も描かれるのだった。物語としてもとても面白い。
本当に、ラストまで飽きることなく宮廷の人間関係模様や主人公の王妃に対する秘めた思い、その王妃の秘めた(いや、あれだけ堂々と人前で抱き合っていて秘めるも何もないけれど…)思いなど、ドキドキワクワクしながら見ていたのである。
だから、ラストのぷっつーーん…に驚いてしまったのですよ。もっと先が見たい。
もちろん、王家のこの先も王妃のこの先も、ポリニャック夫人のこの先も知識としては知っている。
せっかくここまで見たのだから映像としてこの先も確認したかった。
…結局は…私にとっては知識を映像として楽しむ映画…プラス、ちょっと変わった視点だから裏も見れたよ…という所にとどまった。
ちなみにフランス革命や歴史に全く興味のない方がこの映画を見た場合、一体どう思うのか、それは全く私には解らない。(もっとも、興味もないのにこんな物見るかな…見ないよね。)
この映画でフランス革命をお勉強しようなどとは間違っても思わない方がいいです。
あくまでも、興味のある方向けの作品である。
史実のポリニャック
ちなみに、ポリニャック伯爵夫人ヨランド・マルティーヌ・ガブリエル・ド・ポラストロンは、王妃の寵愛を受けてヴェルサイユで一番近く王妃の側に侍りながら、革命前夜に真っ先に逃げ出した。
その後はオーストリアに亡命し、4年後に亡くなっている。
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以下ネタバレ感想
1人の女性を好きになった事はある?
例えば、その方の姿が見えないと胸が苦しくなるくらい。
ガブリエル・ド・ポリニャックは普通の女性とは違うの。
シドニーが胸が痛いほど愛している王妃は、ポリニャック夫人に片思いしている。
王妃が思うほどポリニャック夫人は王妃を思ってはいない。
その不満が、シドニーに「ガブリエル」と、夫人の名前を呼び捨てにさせる。
シドニーがどれだけ王妃を思っても、王妃の最後の望みは愛するポリニャック夫人を救う事だけだった。
王妃には解っているのだ。シドニーがどれだけ自分を愛しているか。
朗読係として4年勤めていても、自分の素性を誰にも明かさず、誰の人生にも深入りしなかったシドニー。
シドニーだけではなく、お側付きのカンパン夫人も同じだ。
私はこの宮殿の中に友達など1人もいません。
そして、王妃も。
あれだけ多くの人が大家族のようにひしめき合って暮らしているのに、誰もが誰かの素性を知らず、本当の愛を与えることもせず、無関心に生きている。
孤児として育ったシドニーは、ポリニャック夫人の身代わりとなって夫人の逃走に付き添う。それは愛する王妃の命令であり、「朗読係」というシドニーの名が失くなった瞬間だった。
もはや自分は何者でもなくなる……。
というモノローグは悲壮感に溢れているけれども、私はこの女はそんなに弱くないと思っている。
馬車の中でのふて腐れた態度。
案外…。
ポリニャック夫人として生き延びたのは、身代わりとなった彼女の方なのかも知れない。
そう考えると面白い。
・「マリー・アントワネットに別れをつげて」公式サイト
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★前田有一の超映画批評★
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