奇跡のリンゴ
作品情報
監督・キャスト
監督: 中村義洋
出演: 阿部サダヲ、菅野美穂、山崎努、池内博之、笹野高史、伊武雅刀、原田美枝子、畠山紬、小西舞優、渡邉空美、小泉颯野、本田博太郎、ベンガル、野間口徹、中村有志、森永悠希、鈴木正幸
日本公開日
公開: 2013年6月8日
レビュー
☆☆☆☆
2013年6月12日。劇場観賞。
リンゴを無農薬で作る事が、これほど大変な事だとは思いもしなかった…。
原作は、石川拓治氏の『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』。
散々宣伝もしているし、タイトルからしてもう苦労して成功するのは解って見るわけなのだけれども、その「苦労」が想像以上に痛々しくて…本当に農業の大変さに頭が下がる。
あらすじ
舞台は1970年代の青森県中津軽郡(現弘前市)。
三上秋則は幼い頃からラジオや自転車、友達のバイクなど何でも分解して研究する好奇心旺盛な男だった。
リンゴ農家・木村家の一人娘・美栄子と結婚して婿養子入りした秋則は、美栄子が農薬アレルギーだと知り、美栄子を守りたい気持ちから無農薬によるリンゴ栽培を開始する。
絶対に不可能と言われていたリンゴの無農薬栽培は案の定なかなか上手く行かず、失敗を重ねる内に畑はどんどんダメになり、借金は膨らみ、周囲の目も冷たくなって行く。
そして、そんな状態で10年の歳月が経つのだった。
思っていたより辛い暗いストーリー
家族と土地の絆を描くホッコリしたストーリーなのだとばかり思って見たのだけれど、この「挑戦しては失敗する10年間」の描写が辛い。もう、本当に辛い。
特にCGを使わなくても見ているだけで死にたくなってくるリンゴ畑の様子…。
それだけで、どれほどリンゴたちが病に侵されているかが解るのだもの。
そして、ひどく荒れ果てていく畑の描写と共に、あんなに生き生きと元気だった秋則の様子も変わってくる。
最初の内は、まるで機械を分解して研究するように次々と農薬代わりの物を試す様子も楽しそうだった秋則。いつも笑っていて、多少の事にはくじけなかった秋則。
彼の顔からどんどん表情が消え、どんよりと沈み込み、同時に家族みんなの顔が曇って行く。
この変化を演じていくサダヲが本当に素晴らしい。痛々しくて切ない。つらい…。
だからこそ、クライマックスには手を叩きたくなるほどの感動…。
どん底と這い上がりのディファレンス
10年以上もの苦労、支えた続けた家族、奥さんの強さと優しさ、子どもたちの健気さ。
そして、何よりも山崎努さん演じるお義父さん…この人が居なければ奇跡のリンゴは出来なかった。
私だったら悪いけどこんな婿が来たら追い出すわ。
「この、かまど消しがっっっ!!」だよ…。
だから、私の元では奇跡のリンゴは絶対に生まれない。これは、生きるか死ぬかの運命を共にできる覚悟がある家族の物語。
あきらめない事と見守る事の大切さと重さを知った。
木村さんの無農薬リンゴは今、20年待ちなんだって…すごい。
家族の力で自然に立ち向かった本物の奇跡のリンゴ。食べてみたい!
以下ネタバレ感想
最初から結末まで解っている話だから特にネタバレも何もないんだけど…。
周囲が案外冷たいなぁと。
しかし、「変わり者」に向ける目なんてこんなもんかもね。
たぶん…周囲が助けてやっていたら秋則は甘えてしまっていて、奇跡のリンゴはできなかったんだろうな。
死を覚悟したから奇跡が起きた。
お義父さんの戦地の話がここに繋がる。
やっと上手く行って…でも、その時はお義父さんはもう居なくて。一番見せたかった人なのに。
しかし、上手く行ったら見に行ってやってほしいと義父は実家の父母に遺言していた。
義父は最後まで、この婿を信じていた。
やっぱり…人を救うのは人なんだな。
初めは中村義洋監督らしくない題材だと思っていたのだけれども、やはりそんな事は無かった。
優しさとファンタジーと切なさの融合。
このリンゴの存在自体がファンタジーを超えた奇跡。
|
|
・奇跡のリンゴ@ぴあ映画生活トラックバック
・象のロケット
★前田有一の超映画批評★
※ Seesaaのトラックバック機能終了に伴い、トラックバックの受け付けは終了させていただきました。(今後のTBについて)
comment