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『映画 妖怪人間ベム』見過ごしたら俺たちはただの妖怪になってしまう…

映画 妖怪人間ベム

   

監督: 狩山俊輔   
出演: 亀梨和也、杏、鈴木福、観月ありさ、柄本明、堀ちえみ、石橋杏奈、杉咲花、永岡佑、畠山彩奈、広田レオナ、あがた森魚、北村一輝、中村橋之助、筒井道隆
公開: 2012年12月15日

2012年12月19日。劇場観賞。

「妖怪人間ベム」は2011年第4クール冬期に日本テレビ系列で3ヶ月放映されていた連続ドラマである。(ドラマ版「妖怪人間ベム」感想 byドラマ@見取り八段)

「善」の性質しか持たない妖怪人間たちが、人間になることを強く望みつつも人間になってしまったら「悪」と戦えない事を悩む。
人間という存在そのものについて深く考えさせられ、特撮の奇抜な演出のみを見せるものではない温かく優しい詩のような名作ドラマだった。

私は、このドラマを制作している河野英裕プロデューサーのほとんどの作品のファンなので、これも3ヶ月毎週ホッコリしたり涙したりしながらガッツリ見ていた。

綺麗に終わっているものの充分続きは出来る結末なのでSPドラマくらいにはなるだろうと思っていたけど、映画になるとはね…。

音楽がドラマ版と同じだったことは、とても嬉しかった。この音楽と温かいストーリーに泣かされてきたんだよね、と懐かしく思い出す。

OPはドラマを見ていた者には嬉しいし、ドラマを見ていなくても原作であるアニメを知っている世代にも懐かしく感じられるものだろう。
ストーリーも一応の説明はされているので、ドラマ版を知らない人でも問題なく観賞できる…と思う。

ただ、たぶん映画だけ見に来る人にはこの作品の良さは伝わりきらない気がする。
そして、ドラマファンのための映画だとしたら今さらな説明がちょっとくどい。

あと、まぁ…これは仕方ないが、映画になった分、ど派手な戦闘シーンが増えていたけど… ドラマからのファンはそういう物は望んでいないと思う。

確かにドラマ版でも「悪」と戦うシーンはあったけれども、このドラマは決してそういうものがメインの作品ではないのである。

ただの優しい人間ドラマだったのになぁ…。

総括すると、劇場版になった結果、中途半端なものになってしまった気がする…。

でも、「どうでしたか」と聞かれたら、良い話ではあるんだよね…いい映画とは言えないかもしれないけど、いい話ではあった。

夏目ベム萌えもちゃんと味わえたし、ドラマから続く人間の善悪問答の部分も解決はないものの泣かされた。

本当にこのドラマが好きだったからさ。映画だけ見に行く人にも好きになってもらいたいんだよね…。

こんなとりとめのない感想で申し訳ないが、私の方こそ映画だけ見たという方に感想を聞いてみたい。

ドラマ版からのファンとしては、「まだ繰り返してるんだなぁ…」と妖怪人間たちを痛々しく思うと同時に愛しく思った。

人間になれる可能性を目の前に広げられながらも、彼らはまたも悩む。

余計なお世話かもしれないけれども、一応説明をつけておくと…

ドラマ版の最終回で、彼らは「人間にならない道」を選択している。
「善」である彼らが「善と悪」両方を持つ人間になってしまうと「悪」と戦えなくなってしまうからだ。

ドラマ版では、妖怪人間たちは、帽子の男から「悪」を取り込まれた人間と戦って救ってきたのだが、最終回になって帽子の男と関係なく悪事を働く人間と戦う事になる。

人間は帽子の男から「悪」を取り込まなくても悪事を働く…それを思い知った妖怪人間たちは人間のために人間になるのをあきらめるのだ。

妖怪人間たちは「善」しか持つことができない不完全体なのである。
「善」であるのに「善と悪」を持つ存在に憧れるという切ない人たちなのだ。

そんな事を踏まえた上で映画版を見ていただけると…彼らの悩みもより深く理解できるかな、と思う。

映画版はちょっとアクション派手目だけど、今日も人間のためにただ戦ってくれている妖怪人間たちを応援してあげてください。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


自分は多くの人間を助けている。
わずかな人間が犠牲になるのは仕方がない。

という製薬会社の社長にベムはいう。

犠牲になる者にも温かい血が流れている事を忘れないでください。

こんな考えで会社を…国を動かしているトップが世の中にどれだけいることか。

俺たちが犠牲になります。

こんな事が言えるトップが世の中にどれだけいることか。

そうやって、妖怪人間たちは今日もまた人間のために犠牲になっている。

「名前のない男」が消えた今でも人間になれる可能性があればなりたいと願うのは、彼らが異形の物だから人間が受け入れてくれないせいだ。
ベムさんなんか、精神的にちょっとおかしくなっちゃってたじゃないか。
幻影まで見たりして……。

ドラマ版の最終回で「名前のない男」が言った通り、彼らは「困難な道のり」という未来を歩んでいるらしい。

時代が変わっても、妖怪人間たちは泣いた赤鬼のようにそのままの姿では受け入れてもらえない。

それでも、戦うのだ。戦わないと
ただの妖怪になってしまう
から。

でも、この劇場版では、彼らがかつて助けた子どもとその子ども…という救いがあった。

ベムさんたちの進む道は困難だけど、こうやって少しずつ彼らのことを理解し、感謝し、好きになってくれる人たちが世の中にきっと増えていく。

そういう面では希望が見えた、とも言えるのかな…。

・「映画 妖怪人間ベム」公式サイト

 

 

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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