殺人の追憶
原題 : ~ 살인의추억:MEMORIES OF MURDER ~
作品情報
監督・キャスト
監督: ポン・ジュノ
出演: ソン・ガンホ、キム・サンギョン、キム・レハ、ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン、パク・ノシク、パク・ヘイル、チョン・ミソン
日本公開日
公開: 2004年3月27日
受賞
第40回大鐘賞:作品賞、監督賞、男優賞、他
第24回青龍映画賞:最多観客賞
他多数受賞
レビュー
☆☆☆☆☆
観賞: 2012年12月20日(DVD観賞)
もう、ずいぶん前にたぶんCS放送で見ているけれども、感想を書いていなかった。最近「カエル少年失踪殺人事件」のレビューを書いたので、これも書いてしまおうと思って改めてDVDで見直した。
本当は、あまり見たくなかった…嫌いだからというのではなくて辛いから。
あらすじ
(1986年、ソウル近郊の農村で若い女性の裸死体が発見された。その後も同じ手口の連続殺人事件が相次いで発生。現地には特別捜査本部が設置され、地元の刑事パク・トゥマン(ソン・ガンホ)とソウル市警から派遣されたソ・テユン(キム・サンギョン)は、この難事件に挑む。性格も捜査方法も異なる二人は対立を続け何度も失敗を重ねながら、ついに有力な容疑者を捕らえるのだが・・・殺人の追憶(Amazonプライム)より引用)
「華城連続殺人事件」と韓国三大未解決事件
「殺人の追憶」は、1980年代に韓国で起きた「華城連続殺人事件」を題材に描かれている。事件その物は史実だが、映画はあくまでも題材にしただけのフィクション。
華城連続殺人事件(ファソンれんぞくさつじんじけん)は、1986年から1991年にかけて大韓民国の京畿道華城郡(ファソン)(現在の華城市)周辺で10名の女性が殺害された未解決事件で、韓国史上最初の連続殺人である。2003年公開の韓国映画、『殺人の追憶』はこの事件をモチーフにしている。2006年4月2日に、最後の事件の公訴時効が成立、全ての事件について犯人を訴追することが出来なくなった。(by wikipedia 「華城連続殺人事件」)
韓国三大未解決事件の1つで、あとの2つはイ・ギュマン監督が「カエル少年失踪殺人事件」で映画化した「城西小学生失踪事件」と、パク・チョンピョ監督が「あいつの声」で映画化した「イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件」。
2人の刑事
物語は事件その物よりも、その捜査に関わった2人の刑事を中心に描かれる。
悲惨な事件なのに、その捜査に当たる刑事のやり方がえげつない。もう、冤罪でも何でもいいから犯人を「作ろう」と必死の拷問まがいの自白強要。
しかし、そんな状態に眉をしかめつつも、何となくクスッとしてしまうのもポン・ジュノ>監督の作品ならでは。
そして、そのえげつない刑事をポン・ジュノ作品といえばこの人だろ、というソン・ガンホが演じる。
手柄を焦る刑事の馬鹿馬鹿しくさえ見える「犯人作り」から、事件が進むほどに笑って見ていられなくなる様相に変わっていく…。その描き方にゾクゾクする。
自らを叩き上げの刑事だと自負している男と、頭脳と科学捜査が解決の決め手だと思っている男。
お互いが反感を抱きつつも相手のやり方を認めていき、1つの視点に辿り着き、追いかけ追いかけ追い詰める…。
その果てにある物に辿り着きたいと、登場人物と同じくらい願いながら見る辛い追跡劇。
画面に釘付けで緊張の頂点に達し、クライマックスでは声を出して泣いた。
自分でも、どうして泣いているのか解らない。
ただ、もうどうしようもなくて。
初見の時もそうだったけれども、今回も同じところで泣いた。
ポン・ジュノ監督の最高傑作
私にとっては、ポン・ジュノ監督の最高傑作だ。
「母なる証明」も「グエムル」も好きだけど、これが一番好き。
…好きと言っていいのかな。とにかく凄いと思ってる。
絶望の果てに、それでも正義はある。
その魂は一生捨てられない。
以下ネタバレ感想
本当に自白強要が許せないほど酷いんだけど、それもパクにとっては「正義」のつもりなんだよね。
だって、彼は自分の「目」を信じているから。
「目を見れば解る」
が、口癖だったパクが、その自分の目を信じられなくなる時。
科学捜査で必ず犯人だと立証できると信じていたソ刑事が、信じられない結果におかしくなっていく様。
トンネルの中に消えていく「犯人のはずだった男」を2人とも追えない。
俺はもう、解らなくなった……。
ここで、もう自分でもワケわからないほど泣いた。
結局、犯人は解らないまま、パクは「人間の仕事じゃない」刑事を辞めたらしい。
でも、あの日、自分自身が遺体を見つけた用水路の溝下を覗いてみる。
もちろん、何もない。
何もないのだけど…これがきっと、あの「普通の顏をした男」が消えたトンネルに繋がっている。
そのラストシーンに鳥肌が立った。
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★前田有一の超映画批評★
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